きゅうすの初心者落語傾聴

主に古今亭志ん朝師匠の落語を聞いた感想を書きます。

古今亭志ん朝「文七元結」人情噺の大ネタ

 

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 先日オートレースを見てきました。スピード感のある迫力のバイクレースは生で見ると面白いですね。日本には3Kオートというように、競馬・競輪・競艇オートレースという4つの公営競技、いわゆるギャンブルがあります。よくバクチは悪だというような世間の認識がありますが、決してギャンブルが悪いわけではないと私は考えています。生活する資金にも手を出してしまうなど、ギャンブルにのめりこんでしまうことが悪いことだと思うのです。

 落語の世界ではよくバクチに手を出して失敗をしてしまう人が出てきます。今回の演目は、そんなバクチに手を出して借金をしてしまう左官の長兵衛が主人公の文七元結の感想です。

 

 さてこの演目、前回の記事の最後に書いたように「百年目」に登場する旦那と番頭さんの関係によく似た二人が出てきます。そこを踏まえての文七元結の聞き所は、旦那と番頭さんが文七にお店の名前を思い出させようとするシーンです。

 

 文七元結は、腕はいいがバクチに手を出してしまい借金が方々にある左官の長兵衛と妻、その借金をどうにかしようと自ら吉原に身を売って家族を取り持とうとする娘のお久、佐野槌の女将や鼈甲問屋近江屋の旦那、番頭、そして文七と非常に多くの人物が登場する人情噺の大ネタです。この噺も悪い人はでてこない聴いていて気持ちが良い内容じゃないかと思います。聞きどころのシーンで文七がお店の名前を思い出せずにいるところに、番頭さんが「長い名前か短い名前か」「屋がつくかつかないか」などと聞き出しどうにか思い出させようとします。だんだんと思い出してきたところで文七が「佐野なんとかというんです!」 「佐野槌かっ!!」 と番頭さん思わず言ってしまいます。そのあとも旦那にぺらぺらと佐野槌の場所まで口走ってしまい挙句の果てには「・・・ということを万屋の番頭さんにきいたことがあります」とごまかす始末。堅物で通してきた番頭さんがひょんなことからこっそり遊んでいることが旦那にばれるという点で「百年目」の旦那と番頭さんに似ていると感じられるシーンです。

 

 笑いあり涙ありの人情噺「文七元結」、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。