古今亭志ん朝「明烏」草食系男子を連れ出そう
知人は毎年年末になると、友人とともに飛田新地に赴くそうです。私は行ったことはありませんが、知人の話を聞いているとああ一度は訪れてみたい場所だなあとしみじみ感じます。ストレス発散やちょっとした楽しみを作るためにも、非日常を体験するということは大事なんじゃないかと思います。
飛田新地のような歓楽街は全国各地に存在していますが、その中でも有名なのが吉原ではないでしょうか。落語の中にも吉原が舞台の演目が多くあります。今回はそんな吉原が舞台の「明烏」の感想です。
日本橋田所町日向屋の若旦那の時次郎は親も心配になるほどの堅物。そんな息子を見かねた親父は町内の源兵衛と太助に頼み、吉原に連れて行ってくれるように頼むというお話です。この噺の面白いところはやはり堅物な時次郎が吉原だと分かった時の慌てぶりでしょうか。私が最初に聞いた時にはオチを聞いた時にうーんなるほどとうなってしまった落語でもあります。
この噺に出てくる時次郎、冒頭から非常に堅物というのがわかります。本を読みすぎて頭が痛くなるとか、初午に行って子供と遊び酒も飲まずにおこわを三杯食べるだとか、「いい若えもんのすることじゃねえや」と親父が言うのも仕方ありません。また、父親に騙され源兵衛と太助とともに吉原に行こうとするときには、父親に習ったこと(酒の席の付き合い方や勘定の仕方など)を全部しゃべってしまいます。しかも源兵衛と太助に直接「あなた方は町内の札付きだ、後が怖い」と親父の言葉そのまま言って二人も面食らってしまいます。
酒も飲みようやく吉原についてもまだ自分が騙されているとは気づかない時次郎。花魁の姿を見てようやく気付きます。「ここは吉原というところでしょう!書物で読んだことがございます!」と慌てだす。ここでも堅物ぶりがみて取れますね。このあとの源兵衛と太助が時次郎を説得するシーンでこの噺のオチにつながる会話が登場します。ここを覚えておいたからこの演目を最初に聞いた時に、オチがよくわかり非常にきれいな落語だと思うことができました。
いやいやだった時次郎も最後には花魁のとりこになってしまいます。私も時次郎のような現代でいう草食系ですが、この噺の源兵衛と太助のような人が現代にも必要なんじゃないかなあと思いました。やっぱり女性というものはいいなと感じる一席でありました。