古今亭志ん朝「百年目」を聞いて
4月も中旬に入り桜も満開です。近くの花祭りを開催しているところで土曜日に写真を撮ってきました。最近はシートを広げてお花見をすることはなくなりましたが、やっぱり桜を見ながら一杯やりたいものです。花見ということで今回は「百年目」の感想を書こうと思います。
やっぱり人間というものは少しくらいの遊びを身につけておかないと、どこかいけないようだと言うことを教えてくれるような気がするのがこの演目です。特に気に入ってる場面は旦那が番頭さんにすこし意地悪をする所です。
堅物で通ってきた番頭さんが派手に遊んでるところを旦那に見られた次の日。番頭さんは旦那に呼び出されます。座布団を当てろと言われてもビクビクしている番頭さん。そこで旦那は「遠慮は表でするもんだ(笑)」といいます。そこの慌てふためく番頭さんのシーンは何度見ても笑えます。この後旦那さんは少しも怒った様子もなく、番頭さんの常日頃の仕事ぶりを褒め、改善したほうが良いところをたとえ話を用いて優しく諭してくれます。(こんな上司が私も欲しいと素直に思います)生真面目に働いていくのももちろん大事ですが、ある程度は息抜きをしていくことが人間性を磨いていくうえで重要なことだと考えさせられる一席でした。
さて、私が今まで聴いてきた志ん朝の落語の中で、今回出てきた旦那と番頭さんの二人の関係がそっくりだなと思う演目があります。その演目の感想は次回の記事で書こうと思います。
古今亭志ん朝「大工調べ」を聞いて
先日金曜ロードショーで高畑勲監督作品の「平成狸合戦ぽんぽこ」が放送されました。ジブリ作品の中で唯一ナレーションを採用しているのがこの作品のようです。そのナレーションはあの三代目古今亭志ん朝です。放送を見ていて、やっぱりいい声だなあと感じました。今回はその志ん朝の語り口が思う存分聴ける「大工調べ」の感想です。
こちらの演目の花は何といっても大工の棟梁が啖呵を切るシーンです。
落語の世界でよく出てきます与太郎と大工の棟梁、与太郎が住んでいるところの大家とお奉行様が主な登場人物です。この「大工調べ」という噺、オチを理解するためには枕を聞いておく必要があります。志ん朝の落語ではちゃんと枕で強調しているため、とてもわかりやすかったです。
大工の棟梁が与太郎のとこの大家さんに怒り、突然の大声ののちべらんめえ口調で啖呵を切るシーンは非常に熱がこもっており、思わず拍手してしまいました。また、大工の棟梁が怒り出す前の大家さんとのやり取りでは、私も経験したことがあるような難しい人との会話を目の当たりにしているような気持になり、なんとも現実味を帯びていると感じました。やっぱり一度でいいから志ん朝の落語を生で拝見してみたかったと常々思います。
是非皆さんも古今亭志ん朝「大工調べ」を聴いてみてはいかがでしょうか。
古今亭志ん朝「愛宕山」を聞いて
20年ぶりに新紙幣のデザインが変更されるようですが、現在の千円紙幣の裏の富士山が変わってしまうのは少し残念なような気がします。人生で一度は登ってみたい山です。山に関する落語といえば「愛宕山」が思いつきます。
個人的に気分が落ち込んだ時によく聞く落語であり、落語ならではのなんとも間抜けな落ちが特徴の内容です。
太鼓持ちの一八と旦那が店の人たちと愛宕山へお参りをする噺で、一八のひょうひょうとした受け答えや「かわらけ投げ」というものに興じる場面が出てきます。特に一八が崖の下に降りて(落ちて?)、竹をたわめるシーンからオチまでは実に力を入れており何度聞いても素晴らしく感じます。
先日スーパーへ立ち寄ったところ、この演目に出てくる「かわらけ」というものを見かけました。知識不足で実際何に使うものなのかわかりませんでしたが、一八と旦那は「愛宕山」でこれを放っていたのかと手に取ってみてなんだかうれしくなりました。調べてみたところ、現在でも「かわらけ投げ」をできる場所があるみたいなので、機会があれば行ってみたいものです。さすがにお金を投げることは致しませんが。
是非皆さんも古今亭志ん朝「愛宕山」を聴いてみてはいかがでしょうか。
古今亭志ん朝「火焔太鼓」を聞いて
この前新宿末広亭に行き、久しぶりに生の高座を堪能してきました。
やっぱりスポーツと同じで映像を見るのと生で見るのは、臨場感といいますか大分違うものだと感じます。どの落語家さんにも十八番というのはあるでしょうが、今回は志ん朝の父古今亭志ん生も得意とした演目「火焔太鼓」の感想です。
こちらの噺を聞いた感想は、最初から最後までしっかり笑える内容だということです。
登場人物は道具屋さんのご夫婦とお殿様とその後家来がでてきます。主人公はこのご夫婦の旦那。どこかぼけているところがあり、あまり商売も得意ではない様子。そのため奥さんからよく小言を言われているようです。噺のなかでこのご夫婦、よくケンカをしているものとみて取れますが、おそらく長く続く、あるいは一生を添い遂げる仲とはこんな二人のことを言うんじゃないかと思います。
要所要所に笑いどころがあるため、最後まで飽きずに聞くことができる内容ではないかと思っております。私が考える聞き所は、お殿様のご家来が店に来た後のご夫婦のやり取りでしょう。旦那の嫌いなものを並べて楽しそうな奥さんとビビる旦那。あの時の間が何とも言えません。
ただ、ひとつわからなかった部分がありましてオチの半鐘というのが何のことかよくわかりませんでした。字をみれば何となく想像できますが、火事の時に鳴らす鐘のことだとか。落語を聞いているといろんな知識が身につきそうですね。
是非皆さんも古今亭志ん朝「火焔太鼓」を聴いてみてはいかがでしょうか。
古今亭志ん朝「井戸の茶碗」を聞いて
まだ落語を聞き始めて間もないもので、多くの落語を知っているわけではありませんが、噺の内容として私が一番気に入っているのが「井戸の茶碗」という演目です。
こちらの演目で特に気に入っている特徴は悪い人が一人も登場しないということです。
簡単にあらすじを説明すると、千代田卜斎という浪人者と若侍の高木作左衛門の二人の商いを、くず屋の清兵衛さんが間を取り持つといった構成が主となります。金に困っていた千代田卜斎がたまたま通りかかった清兵衛さんに仏像を売り、それを高木作左衛門に清兵衛さんが売り渡したところ、仏像の中から大金がでてきてさあどうしようといったお話です。
志ん朝の井戸の茶碗を聞いていると、この三人が本当に江戸時代に存在していたかのように話に入り込むことができます。あー江戸っ子とはこういう人のことを言うんだなと思うことができるのがこの演目です。
また、この噺でもう一つ気に入っているところがサゲです。
噺の初めから最後までの内容を「ストンッ」と落としつつ、笑って終わりになるきれいなサゲだと思います。個人的にこういうオチこそが落語なのではないかと思いました。主な登場人物も少なく、噺の内容もわかりやすいこの演目から聞き始めたからこそ私が落語を聞いてみようと思った噺なので、初心者でも聞きやすいものかと思います。
是非皆さんも古今亭志ん朝「井戸の茶碗」を聴いてみてはいかがでしょうか。